ご無沙汰しております。m(_ _)m
秘伝千羽鶴の鶺鴒の作り方について長年謎に思っていたことがやっと分かりました!
鶺鴒とは…?
まず、鶺鴒についてですが、下の写真のように2羽の折鶴がつながっている作品です。
鶺鴒の謎
で、何を謎に思っていたかというと、つなぎ方がかなり特殊なことです。
下の写真のように、穴をあけて半分を丸めて筒状にして穴に通す、という作成過程がある特殊な作り方なんです。
似たような形で、夢の通ひ路(ゆめのかよいじ)というものがありますが、こちらの作り方は鶺鴒よりはシンプルなんですね。
夢の通ひ路の作り方で角度を変えれば鶺鴒の形になるので、何でこんな複雑な作り方にしたんだろう?
と本当に不思議に思っていました。
原案通り作ると、片方の折鶴の背中がどうしてもつぶれてしまうんです。(ギャラリーのページでは、原案通り作りましたよアピールも込めて、つぶれてる側の折鶴のアップ写真も撮りましたが…(笑))
なので、作者の遊び心か何かかと思っていました。
作成過程の謎の意味
この謎を解くためには、作品に添えられている狂歌にも目を向ける必要がありました。
鶺鴒の 尾のひこひこを 見習いて 大きな國を たれるほど産む
「秘伝千羽鶴折形」より
せきれいの おのひこひこをみならいて おおきなくにを たれるほどうむ
狂歌だけ読むと「???」となりますが、日本書紀の国産みの章のことを歌っているんです。
「日本書紀 鶺鴒」と検索していただいても色々な解説サイトが引っかかりますが、イザナミとイザナギという神様が国を産む方法が分からなかったときに、鶺鴒が現れて頭と尻を振る動作を見て交合の仕方を知ったとあります。
二人の神様の愛の行為によって国が産まれたと日本書紀にはあるんですが、その描写が秘伝千羽鶴折形の鶺鴒でされているんですね。
改めて鶺鴒の写真を見ると、確かに愛の姿にも見えてきますね(笑)。
そして、ずっと謎だったあの複雑な作成過程です。
穴に筒状のものを通す…
そして、国が産まれる…
(ノ゚ο゚)ノ オオオオォォォォォォ…!!
(/ー\*) キャー!!
この事実に気が付いた時、鳥肌立つくらいに感動しました。
だって、完成形だけではなくて作成過程にも意味を持たせてる訳ですから。
10年以上謎に思っていたので、もしかしたら今年一番の感動だったかもしれません(笑)。
改めて解説書を読んでみると
秘伝千羽鶴折形の狂歌の解説も細かくされている岡村昌夫先生「つなぎ折鶴の世界 -連鶴の古典『秘伝千羽鶴折形』」の鶺鴒の解説を読んでみると、かなり言葉を選んでその旨の解説がされていました(笑)。
未熟な私はその行間を読むことができませんでした。
さらにその解説の中で
作者(魯縞庵)が題を付けたのではないかということになり、一般に編著者(離島)が命名したと思われる中で、その意味でも特殊な作品と言えるでしょう。
岡村昌夫先生「つなぎ折鶴の世界 -連鶴の古典『秘伝千羽鶴折形』」より
と誰が題名を付けたのかと深い考察もされていました。
これをきっかけに古典に興味を持ち始めたので、古典の本も読んでいこうと思います。
おまけ – 日本書紀の鶺鴒が出てくる箇所
原文(漢文)
一書曰。陰神先唱曰。美哉善少男。時以陰神先言故爲不祥。更復改巡則陽神先唱曰。美哉、善少女。遂將合交而不知其術。時有鶺鴒飛來搖其首尾。二神見而學之。卽得交道。
「日本書記」より
訳(宇治谷孟先生「全現代語訳 日本書紀」より引用)
一書にいう。女神が先に唱えていわれるのに「あぁうれしい。立派な若者に会えた」と。そのとき女神のことばが先だったので、不詳であるとして、また改めて回り直した。そして男神が先に歌って「あぁうれしい、愛らしい少女に会えた」と。そして交合しようとした。しかしその方法を知らなかった。そのとき鶺鴒が飛んできて、その頭と尻尾を振った。二柱の神はそれを見習われて、交合の方法を知られた。
宇治谷孟先生「全現代語訳 日本書紀」より